転職したいと思う気持ちはあるものの、転職時に年収が下がってしまうのではないかと不安になって、転職活動に二の足を踏んでいる方も多いかもしれません。
年収が上がるケース・下がるケースについて、年収の決まり方の原則から、データと実例を交えて解説します。
転職時に年収が上がる人は33%、下がる人は36%
厚生労働省「雇用動向調査」によると、転職時に年収が「増加」「減少」「変わらない」がおおよそ3~4割ずつで、「増加」と「減少」はほぼ同程度の割合になっています。
また、3割以上増加した人は約5%で、転職時に年収が大幅に上がるケースは限定的と言えます。
データ: 厚生労働省「令和3年雇用動向調査」一般労働者・入職前1年未満に就労経験ありを当サイトが集計
年収はどのようにして決まるか
年収は個人の能力や頑張り、気合で決まるものではありません。
一般的に、年収は【業種】【業種内の業績順位】【職種】【職位】により相場が決まっています。
【業種】 業種ごとに利益構造、利益率、人件費率がある程度決まっているため、給与水準の高い業種、低い業種が存在します。例えば金融や商社は給与水準が高く、小売やサービス業は給与水準が低いと言われています(参考: doda「業種別の賃金」)
【業種内の業績順位】 一般的には同業種であれば、業績上位であるほど利益率は高く、平均年収も高くなっていることが多いです
【職種】 年収は、需要と供給のバランスで決定される側面もあります。よって、以下の職種は給与水準が高くなっています
・採用ニーズの強い職種(ITエンジニア、DXコンサルタントなど)
・利益創出に直結する職種(営業、経営企画、マーケティングなど)
・専門性の高い職種(企業弁護士、法務、経理財務など)
【職位】 大きな責任を負える、大きな意思決定ができる、大人数の部下マネジメント経験がある人材は給与水準が高くなります
転職時に年収が上がるケースは?
転職時に年収が上がる場合は、以下のような条件に該当していることが多いです。
【企業由来】
・同業界内の上位の企業への転職
・給与水準の高い業種への転職
・外資系企業、インセンティブ設計の充実した企業への転職(雇用・賃金の安定性とトレードオフになっている)
【個人由来】
・他社では評価されるスキル・経験を持っている
・ヘッドハンティング、引き抜き
・前職で不当な評価を受けていた場合
転職時に年収が上がった事例①: 準大手広告代理店から博報堂への転職
準大手広告代理店(年収800万円) ▶ 株式会社博報堂(年収1200万円)
転職満足度: ★★★★☆(満足)
年収変動 | +400万円 |
職種 | 営業系 |
転職時年齢 | 31~35歳 |
同業界内で上位の企業に転職した事例です。大きな仕事を任されやりがいも増したため、転職満足度が高くなっています。
転職時に年収が上がった事例②: 日系メーカーから外資コンサルティング会社への転職
大手電機メーカー(年収700万円) ▶ 大手外資コンサルティング企業(年収850万円)
転職満足度: ★★★★☆(満足)
年収変動 | +150万円 |
職種 | 営業→コンサルタント |
転職時年齢 | 26~30歳 |
日系メーカーから外資コンサルティング会社に転職した事例です。一般的に製造業よりもコンサルティング業の方が給与水準が高く、また、日本企業よりも外資系企業の方が雇用や賃金が安定していない分、給与水準は高くなっています。
転職時に年収が下がるケースは?
転職時に年収が下がる場合は、以下のような条件に該当していることが多いです。
【企業由来】
・同業界内の下位の企業への転職
・給与水準の低い業種への転職
・外資系企業、インセンティブ設計の充実した企業から一般的な日本企業への転職
・大手企業からスタートアップ、ベンチャー企業への転職
【個人由来】
・未経験の職種へのチャレンジ
・Uターン、Iターンで給与水準の低い地域に移る場合
・労働環境の改善、ワークライフバランスの改善を転職の目的としている場合
・会社の不祥事やリストラなどにより、急遽の転職
転職時に年収が下がった事例①: 大手Webメディア企業からヤマハ発動機へのUターン転職
大手Webメディア企業(年収600万円) ▶ ヤマハ発動機株式会社(年収420万円)
転職満足度: ★★★★☆(満足)
年収変動 | -120万円 |
職種 | ITエンジニア |
転職時年齢 | 25歳以下 |
ワークライフバランスの改善を目的としたUターン転職の事例です。給与水準は下がりましたが、プライベートが充実したため職満足度が高くなっています。
転職時に年収が下がった事例②: 大手金融機関からベンチャー企業への転職
大手金融機関(年収1000万円) ▶ 株式会社ラクス(年収550万円)
転職満足度: ★★★★☆(満足)
年収変動 | -450万円 |
職種 | 個人営業→法人営業 |
転職時年齢 | 26~30歳 |
大手金融機関からベンチャー企業に転職した事例です。前職はインセンティブ比率が高く賃金が不安定だったことと、やってみたかった法人営業にチャレンジできていることが転職満足度が高い要因です。
転職時に年収が上がらなくても、数年後には前職に勤め続けた場合よりも年収が高くなることもある
転職時に年収が上がらなくても、数年後には前職に勤め続けた場合よりも年収が高くなることがあります。その場合、以下のような条件に該当していることが多いです。
【企業由来】
・転職後に業績が伸長した
・職位の低いうちは年収が抑えられているが、職位が上がると大幅に年収が上がる昇給カーブが設定されている企業
・中途採用は前職以下の年収で採用することがルール化されている
【個人由来】
・スキル経験を積んで、成長した
・強みが発揮できる職種・環境に転職できた
・大きなインセンティブ報酬が発生した
・転職先の評価制度にマッチした
転職数年後に、前職に勤め続けた場合よりも年収が高くなった事例
大手Webサービス(年収600万円) ▶ 株式会社サイバーエージェント(年収600万円)
転職満足度: ★★★★☆(満足)
①現在の年収 | 800万円 |
②前職に勤め続けていた場合の推定年収 | 650万円 |
①-② | +150万円 |
職種 | デザイナー |
転職時年齢 | 26~30歳 |
転職後勤続年収 | 3~5年 |
サイバーエージェントに転職し、「自分の強みが生きている実感」と「成長環境」が向上した転職事例です。前職よりもサイバーエージェントの方が平均年収は高くなっています(有価証券報告書による)
お金は大事。でも、目先の年収よりも生涯賃金で考えましょう
向こう1年でもらえる報酬の大小に左右されないキャリア設計が重要です。
自分の強みが生きる環境で、長い目で見た時に市場で必要とされるスキルや経験を計画的に積んでいくことが生涯賃金を高めることにつながるでしょう。
【この記事の監修】
あるXの告白 https://twitter.com/marukokuyo
X(旧Twitter)フォロワー数 1.7万人のビジネス系インフルエンサー。(ID: @marukokuyo)
新卒で入社した会社では配属希望がかなわず、第二新卒として外資系企業のマーケティング部門に転職。10年以上マーケティングの実務や新卒・中途採用の職種別採用に関わった経験をもとにしたビジネスやキャリアについての投稿が好評を博す。
就職メディア「ワンキャリア」に複数回寄稿。