「やるからにはもっともっと大きな仕事をしてみたい。だから大手企業で働いてみたい」と考えるのはビジネスパーソンとして、とても自然なことです。でも、自分の経歴では大手企業に採用されるのは難しいと心のどこかで諦めてしまっている人も多いかもしれません。
本記事では”中小企業から大手企業への転職”について、実際の経験者の声をもとに解説します。
結論|中小企業から大手企業への転職は無理ではありません
結論を先にお伝えすると、中小企業から大手企業への転職は無理ではありません。後ほど紹介する通り、実際に多くの人が中小企業から大手企業への転職を実現しています。
もちろん誰もが高確率でできることでもありません。まずお伝えしたいのは“中小企業で働いている”という理由だけで不採用になる人はいないということです。
言葉の定義|中小企業、大企業、大手企業
中小企業は、会社の規模感の分類
中小企業の定義は中小企業基本法により定められており、会社の規模による分類で、業種により条件がが異なります。
大企業の定義はいくつか存在
大企業の定義は明確化されていませんが、上記の中小企業に当てはまらない企業を指すことが多いようです。ただ、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などでは常用労働者1,000人以上を大企業としていおり、定義はいくつか存在していると言えます
大手企業の定義はない
大企業と似た言葉で「大手企業」という言葉がありますが、明確な定義は存在しません。とりわけ特定の分野でシェアが上位(3位以内ないし5位以内程度)の企業のことを大手企業と呼ぶ場合が多いようにい思いますが、単に知名度の高い企業のことを指す場合もあります。
中小企業であっても大手企業の場合はある
上記の定義にもとづけば、中小企業かどうかと、大手企業かどうかは、独立した概念です。つまり「中小企業であっても大手企業」ということはあり得ます。
ただそういったケースはまれであるため、この記事では中小企業(大手企業ではない)から大手企業への転職について解説します。
中小企業の退職検討理由
マイ転職ストーリーに寄せられた転職体験談より、中小企業でよくある退職検討理由のパターンをご紹介します。
パターン① 仕事の大きさ、やりがい要因
大きな仕事にやりがいを感じるのはとても自然なことです。より高みを目指して中小企業から離れることを検討する方がいます。
広告の仕事をするからには、もっと大きな仕事をしてみたいと強く思った。クライアントも個人事業の方が多く、もっと大きな組織と向き合ってみたいと思った。(30代男性|中規模代理店▶株式会社博報堂)
パターン② 報酬要因
中小企業は、大手企業ほど給与水準が高くないことがほとんどで、それを理由に転職を検討する方は多くいます。
給与水準が低く、残業も多かったため転職を検討した(20代男性|中規模IT企業▶外資コンサルティング)
パターン③ 経営状況要因
中小企業は大きな企業に比べると、経営が不安定なことが多く、それが退職のきっかけになることがあります。
不景気における人員整理があり退職しました(30代男性|小規模IT企業 ▶ 大手技術系人材サービス)
パターン④ 人間関係、労働環境要因
小規模の事業者では経営者や一部の幹部に属人的に権限が集中することでトラブルが起こることがあります。また、少人数組織では人間関係が悪化しても、異動などの措置により解決することが難しいという側面があります。
ワンマン企業で育てた部下が次々と辞めていく為。(30代男性|小規模メーカー▶KYB株式会社)
大手企業へ転職するメリット
大企業の規模感、先進性、資本力は、転職先としての魅力の源泉になります。
仕事のスケールが大きい
グルーバルを含めたエリア展開、予算規模、世の中への影響、先端技術に触れられることなど、あらゆる側面で大手企業の仕事のスケールは大きく、魅力的だと感じる方も多いでしょう。
憧れだった都内で大きなプロジェクトで仕事ができた(30代男性|株式会社清水建設へ転職)
給与水準が高い、福利厚生がしっかりしている
大手企業は、同業の中小企業と比べると給与水準が高くなっています。また、福利厚生も充実していることが多いです。
給料の上昇幅が大きくなった(20代男性|株式会社クボタへ転職)
労働環境が整っている
大手企業、特に上場企業の場合は常に社会や投資家から法令順守姿勢や統治機能に対して厳しい目を向けられているため、残業の規制、残業代の支払い、オフィス環境などの労働環境が整っている場合が多いです。
仕事の裁量やメリハリのある生活が送れるようになり、定時勤務で帰れる機会が前職よりも増えた(20代男性|トヨタ自動車への転職)
大手企業で積んだスキル・経験が将来のキャリアに生きる
世界を相手に仕事をした経験を積むことや、最先端の技術に触れることは、必ず将来のキャリアにとってプラスになります。
グローバル企業で働いた実績を持つことで、日本に限らずポジションを選べるようになった(40代男性|日本オラクル株式会社へ転職)
中小企業から大企業への転職実例と年収変化
「令和2年賃金構造基本統計調査」集計結果によると、従業員1000人以上の企業と99人以下の企業では、全体の平均年収に150万円以上の差があります。
従業員数 | 1000人以上 | 100~999人以下 | 10~99人以下 |
---|---|---|---|
男性 | 642万300円 | 532万4800円 | 449万2000円 |
女性 | 414万7800円 | 385万1000円 | 340万3400円 |
全体 | 562万4000円 | 477万5300円 | 410万9700円 |
では、実際に中小企業から大手企業へ転職して、年収が大幅にアップした事例を見てみましょう。
小規模運輸会社 ▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社
男性、転職時年齢 31~35歳、法政大学卒(理系)
前職 | 現職 | |
転職前後の年収 | 280万円 | 700万円 UP |
転職3年後の年収 | 300万円 * | 760万円 UP |
大企業へ転職するデメリット
メリットの裏返しではありますが、大企業へ転職するデメリットもあります。転職を検討する際はご留意ください。
中小企業からの大手企業への転職が実現するパターン
大手企業で働くことにはメリットがたくさんあり、離職者も比較的少ないことから、誰でも簡単に転職が実現することはありません。中小企業から大手企業への転職は以下のようなパターンにおいて実現しやすくなっています。
同業種・同職種のほぼ変わらない業務で抜群の実績がある
例えば、営業職だと中小企業と大手企業で売り先・売り方が大きく変わらないことがあり、中小企業で抜群の実績を上げていれば大手企業に採用されることも珍しくありません。
同業種・同職種であっても技術職の場合だと、中小企業と大手企業では仕事の進め方や求められるスキルが異なる場合もあります。
大手企業では育成できていない領域のプロである
これまで多くの大手企業では新卒一括採用で優秀な人材を確保し、数年ごとに様々な職種の経験を積ませる、いわゆる”ジョブローテーション制度”を取り入れてきました。この制度は、その会社で万能に活躍できる人材を育成できる一方、専門性の高い人材を育てることが難しいと言われています。特に近年重要性が増してきたIT職種、マーケティング職種、事業開発経験者の確保は、大手企業にとって喫緊の課題で、外部からの登用に積極的な場合があります。
第二新卒で学歴・学生時代の成果で、ポテンシャルが評価される
第二新卒採用の場合、現職が大手企業であろうと中小企業であろうと、たった数年での業務の実績を評価することは極めて困難です。ですから、新卒採用と同様に学歴・学生時代の成果でポテンシャルを評価し、現職での実績や職歴の評価の比重は小さくなることが多いです。
大手企業への転職者が利用する転職サービス
大手企業は中小企業と比べると採用費が潤沢で、できるだけ登録者数の多い転職サービスに求人を流しているようです。また、大手企業は自社採用を推進している場合もあり、中途採用募集の情報をチェックしてみるのも良いでしょう。
マイ転職ストーリーでは大手企業転職者のアンケートをもとに「満足度の高い転職サービス」ランキングを発表していますので、合わせてごらんください。
誰もが大手企業が合うわけではない
ここまで解説してきた通り、人気の高い大手企業にもデメリットはありますし、様々な理由で大手企業を退職する人もたくさんいます。
また、中小企業の機動性の高さ、専門性の高さ、出世のスピードなどが合っている方も多くいると思います。
大事なのは、自分の強みを理解し、最もいきいきと輝ける環境で働くことです。
これからもマイ転職ストーリーは、皆様が個性を生かしいきいきと働くためのサポートを続けてまいります。
【この記事の監修】
あるXの告白 https://twitter.com/marukokuyo
X(旧Twitter)フォロワー数 1.7万人のビジネス系インフルエンサー。(ID: @marukokuyo)
新卒で入社した会社では配属希望がかなわず、第二新卒として大手外資系企業のマーケティング部門に転職。10年以上マーケティングの実務や新卒・中途採用の職種別採用に関わった経験をもとにしたビジネスやキャリアについての投稿が好評を博す。
就職メディア「ワンキャリア」に複数回寄稿。